須田景凪という引きこもりミュージシャンを褒め称えたい
”須田景凪“という音楽家をご存知だろうか。
これをみているほとんどの方が知っているであろうが一応書いておくと
”バルーン“というボカロP名で“シャルル”というYouTubeで
1000万再生以上されている名曲を作ったインターネット上では神と崇められるような存在である。
彼は2013年にドラマーとして所属していたバンドの先輩に自分の曲を否定されてから
音楽系の学校を辞めて、2018年に本人名義でデビューし名盤"Quote"をリリースするまで
自室に篭ってひたすらパソコンで音楽を作り続けた。
はっきり言って狂気である。
2016年末の“シャルル”がヒットする前にも“花瓶に触れた”など
ある程度ヒットした曲はあるのだが
(更にその前日譚として“トピアリー”、”モーダル“、”アルコーブ“などもあるが)
それらの収入だけではバイトなどの収入を含めてもかなり苦しかったはずである。
そんな中でコンスタントに楽曲をインターネットに投稿し続けた、
偏執的とも言えるその精神力には驚かざるを得ない。
恐らく彼を支え続けたのはボカロPとしての大先輩“米津玄師”の存在が大きいのだと思う。
彼の1stアルバム”diorama“に収録されている“ディスコバルーン”、
またその時の”米津玄師“が所属していた”BALLOOM“というレーベル名に肖った
ハンドルネームを使っていたことからもそれが分かる。
(本当に彼が米津玄師を意識していたかは不明だがここではよく言われている仮説として取り上げさせていただく)
彼の成功を無くして“須田景凪”、いや“バルーン"は存在し得なかったというのはあながち間違ってはいない指摘ではある。
なら“須田景凪”がただの”米津玄師“’フォロワーとして有名になったのかといえばそんなことは全然無く、
むしろ九分九厘は本人の類稀なる実力と努力によるものだ。
彼の楽曲に関し特筆すべき点はまずインパクトのあるタイトルであろう。
“ポルノグラフィティ”に影響を受けたと語るラテン語などの意味ありげなタイトルに
ランキングなどで新しい楽曲を探しているリスナーは「おっ」と目を止めてしまう。
加えて、ドラマーとして培ってきたキメの細かいリズム構築力。
ポストボカロ的なJ-POPの影響を受けた心地の良いメロディ。
そして、倦怠感を感じている男女のすれ違いや
一人暮らしのベッドルームミュージシャンの孤独を反映したような
出来の良い都会小説を読んでいるかのような歌詞。
その全てが一つの完成系として楽曲に現れている。
時代の流れが彼に味方したところも大きい。
彼の盟友、“アボガド6”のイラストはもはやSNSで見ない日はないと言っていい。
また、"米津玄師“の活躍によってVOCALOID界隈が賑わっていったのと時期を同じくして
彼はそれまで禁忌ともされてきたボカロPセルフカバーの第一人者としてヒットシーンにのし上がっていった。
(LOSERの大ヒットとシャルルによるボカロP本人によるセルフカバーの流れはほぼ同時期に起きた出来事である)
"MOIL"のMVが発表された後、有名税と言うべきか下衆な意見もインターネット上で多く見かけるようになったが、
彼には信じる道をひたすらに進んで欲しい。
自分が信じたものを徹底的に信じていきたいと思った次第だよ!
— 須田景凪 バルーン (@balloon0120) October 12, 2019